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「結婚、つっても、シンプルに考えりゃ紙切れに名前書いて役所に出すだけだろ。そんなモンで将来を誓えるんなら………違う形で誓ってもいいだろって。」
「シンプルすぎだろ…」
本来なら呆れてもいい台詞。
でも今は、何より心に染みた。
「アキの言った通り、俺たちはまだ学生で、社会を知らねぇ。この先大学を卒業して社会に出たら、色んなことがあって、考え方も変わってくると思う。
けど、何度も言うが、俺のアキへの想いは変わらねぇ。この先何があっても。このリングは、その誓いの証だ。俺のアキへの、変わらない気持ちの証。」
夜神の大きな温かい手が、オレの左手
を包み込む。
もう─────溢れさせてたまるかと必死に耐えていた涙が、とうとう耐えきれずに溢れ落ちた。
堰を切ったように、次から次へと涙が溢れて止まらない。
それが決して悲しみの涙じゃないことを、オレも夜神も理解している。
「男同士で、法律上じゃできない。それは百も承知だが────それでも、敢えて言う。」
オレの好きな夜神の低い声。
いつまでも聞いていたいと思える声。
オレを間違いなく幸せにしてくれる、愛しい人の声。
「アキ、……結婚して。」
声が、出なかった。
でも、言葉はいらなかった。
オレは目の前で優しく微笑む最愛の恋人に、そっと手を伸ばした───────────
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