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「オレ、今日は3限で終わるけどお前は?」
大学までの道を並んで歩きながらオレは夜神に訊ねた。
「俺は4限まで。」
「ふぅん。オレの方が終わるの早いんだ。じゃあ先帰って飯とか作ってるな。」
夜神が疲れて帰ってきた時、晩御飯の用意がしてあるといいだろうし。
そう思ってオレが言うと、夜神はじっとオレを見た。
「…待ってる、って言ってくんねぇんだ?」
「え?」
「飯作ってくれんのはありがてぇけど、待っててもらうのも嬉しいもんだよ、恋人としては。」
…なんだか切実な訴えのように聞こえる。
オレが言ったことは実に現実的な内容だったんだけど、夜神がオレに望むのはそういうことじゃないらしい。
「───で? 待っててくんねぇの? アキ。」
「…待ってる。」
「よくできました。」
夜神の要求を素直に受け入れたオレの頭を、夜神はまるで駄々っ子をあやすように撫でてきた。
何コレ…マジで駄々っ子みたいじゃんか、オレ。
ごくフツーのことを言っただけなのに。
ま、いいけど。
逆の立場だったら、オレも夜神と同じ気持ちになってたかもしれないし。
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