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夜神は、オレに対して怒ることはあったけれど、手を上げたことは一度もなかった。
夜神は絶対にオレに手を上げることはないと信じていた。
茫然と夜神を見上げると、夜神も信じられないといった表情でオレを見下ろしていた。
「あ…」
「…っ」
互いに茫然としてしまっていて、一言も発しない。
殴った夜神ですら、今起こった事態に驚いているようだった。
重苦しい沈黙。
他の客が来ないことが、唯一の幸いだった。
居たたまれない。
逃げ出したかった。
その場から。
───夜神がオレを殴ったという事実から。
とにかく、逃げ出したかった。
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