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博物館に入って数十分。
正直、時間なんて忘れるくらい、展示物に見入っていた。
もともと歴史は好きな方だから、目の前の展示物やわかりやすい音声ガイドのお陰で一気にその魅力に引き込まれた。
真琴は真琴で、オレ以上に見入っていて、多分オレの存在なんて忘れてる。
パンフレットと展示物を見比べるその真剣な表情に、可愛いなぁ…とか思ってみたり。
「トイレ行きてーな。」
それから暫く鑑賞していたけれど、尿意を感じてトイレを探す。
仕方ないだろ、これは人間として当然の生理現象なのだから。
用を足し終え、ふと時間が気になった。
腕時計で時間を確認しようとするも、
「…あ。」
そうだ。そういえば腕時計、してこなかったんだっけ。
普段は出掛ける前に癖のように腕時計を手首に巻いていたけれど、昨日はそれどころじゃなかったんだよな…
頭の中がぐちゃぐちゃで、とにかくあのアパートを出ることしか考えてなかったから。
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