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鞄の中からスマホを捜しだすと、時間を見ようとして電源を入れた。
「…!」
受話器の絵が描かれたアイコンに、『1』という数字。
着信があったという印だった。
ドクン、と心臓が跳ねる。
まさか───という思いでタップし、電話をかけてきた相手を確認して、今度は一際大きく心臓が跳ねた。
『夜神 諒』──────
表示された名前に、手が震える。
どう読んでも、何度読んでも、夜神の名前であることに変わりない。
何の音沙汰もなかった夜神から、たった1本、着信があったという事実が、オレの胸を強く締め付けた。
着信があったのは、今から15分程前──────
オレは普段、周りに配慮してサイレントモードにしているから、着信があっても気づかないことが多い。
そのことを、今程後悔したことはなかった。
リアルタイムで出れば、夜神と話せたのに──────
折り返しても、もう出てくれない可能性が高い。
でも───でも!
オレが悪いんだから。
誠心誠意謝りたいから。
せっかく夜神が電話をかけてきてくれる気になったんだ。オレはそれに応えないと。
逸る気持ちを抑え、震える指で夜神の名前をタップする。
耳にスマホをあてると、心拍がより一層加速した。
『───アキ!?』
────………!!
数日ぶりに聞いた恋人の声に、一気に目頭が熱くなった。
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