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呼び止められて振り返ると、真っ黒い人影が立っていた。黒い山高帽に黒マントで身を包み、手に黒いステッキをついている。顔はぎょろついた目と悪魔的な鼻、その下に嫌味なまでに細いヒゲがピンと跳ね上がり、画家のダリにとてもよく似ていた。
「お前に頼みがある」
「すみません。急いでいるのです」
「大したことではない」
「これから就職の面接なのです」
嘘ではない。生活が、いや、人生がかかっている。
「わしのキリキリトッポをワシシさせてやろう」
僕の言葉を聞いていなかったように、おじさんは言った。僕は、無視して立ち去ろうと背を向けた。途端、おじさんはステッキで僕の肩をつついてきた。僕は、ムッとして振り向いた。
「いや さっきからどうもキリキリトッポがサバルメないんで困ってるんだ。だから、お前にキリキリトッポをワシシさせてやろうというのだ。悪くあるまい?」
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