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困惑。逃げなくては。逃げなくては、と強く思った。
「こんなチャンスはめったにないぞ。お前たちのような者が、キリキリトッポをワシシできるなんてことはな。どうした、うつむいて」
どうしてこういう時にこういう人に捕まるのか。僕は走り出すため、そっと膝を落としかけた。
「何だかウルサイのう」
おじさんは、近くのゴミステーションに集まっているカラスの群れを振り返った。そして、そっちにステッキの先を向けると、ピシピシッと先から何かが飛び出した。
すると、カラスが二羽頭を撃ち抜かれ、他のカラス達はいっせいに飛び去った。
おじさんは、何事もなかったようにステッキをついて、僕の方を振り向いた。
ヤバイんだ、この人…。かなりヤバイ…。
「さ、早いととこやってしまおう」
「あ、あの、すみません。その、僕は、そのキリキリ・・・なんとかっていうのが、ちょっと、よく分からないので・・・」
たださえギョロリとしたおじさんの目が、いっそう見開かれ、唇は歪み、ヒゲは狂気の振れ幅を示すかのように細かに振動した。
「キリキリトッポが分からない!? 嘘をつくな!!」
大の男が、体を委縮させるほどの怒鳴り声だった。それでもう、怖くて何も言えなくなった。
「では、聞こう。お前は普段どうやってロロチンタをララヌってるんだ? まさかキリズッパをタバセんでいるのか?」
もう、何もかもが分からない。
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