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「ああ、そうか。もしかしたら、お前は何か急いでいるな?」
え? そうです。そうですけど、ようやく分かってくれたのか?
「そうか、そうか。それは失敬した。では、こんな無駄口を聞いている暇はないというわけだ。それでお前が嘘をついた訳が理解できたぞ。それでは、お前には時間がないということだから、気を取り直して、早いとこキリキリトッポをワシシしてくれ。さあ!」
だめだ。やるしかないんだ。僕は、今ここで、何か、それが一体何なのかが、さっぱりわからないことを、やるしかないんだ!
「いやいや、違う違う。キリキリトッポだ。キリキリ・・・そこはキリキリトッポじゃないだろ! からかってるのか、キリキリトッポはここだろ! さあ!
そうそう。うまいぞうまいぞ」
もう面接には間に合わないだろう。会社に電話しなくちゃ。電話させてもらえるだろうか・・・。
「おい! 別のことを考えるな! 集中しろ! そのままキリキリトッポを…イテテッ! ハヌマってるよ!」
「ごめんなさい!」
「ワシシだ。ワシシして欲しいんだよ、私は」
「はい。ワシシですね。ワシシ、ワシシしないと・・・」
「お。そうそうそう。そのまま、そのまま・・・ワシシだ、ワシシ! ワシシ!
ようし、そうだ!」
「で、できました!」
僕だって、やればできるんだ。失敗ばかりが人より目立つ人生だけど、何か、小さな自信が持てたうな気がした。もしかしたら面接に行くよりも、長いスパンで見ればこれはこれで貴重な体験だったかもしれない。
「フー・・・。いや、ありがとう。やっと楽になれた」
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