【2】

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次の日になり、学校ではいつも通りの時間が過ぎて放課後になった。 教室で友達と別れて、下足場から出ると、目の前には校門が見える。 昨日と同じで、賑わっていない校門。 今日もそこを通り過ぎて、家に向かって足を進める。 幸いな事に、今日はオレを呼びとめる女の子は居なかった。 後は家に帰るだけ――と、そう思っていたのに。 「やぁ……」 もう少しで、忘れる事が出来たと思うのに。 公園近くの道に来た所で、聞き覚えのある声がした。 「は……?」 声のする方へ向けば、そこには見覚えのある奴がいた。 「久しぶり」 「お前、なんで……」 相変わらず綺麗な顔で、にこにこしながら、オレに手を振ってる。 「驚いた? 君の姿が見えたから、声かけたんだけど」 もう会わないと思ってたから、素直に驚いた。 何も返せないでいると、奴はオレとの距離を縮めてきた。 「あれー? 今日は、いつもの元気ないんだ。あ、もしかして……俺に会えなくて、寂しかった?」 にやりと笑いながら、奴はオレの顔を見てくる。 「ばっ……! ふざけんな……!」 何故か、顔が熱くなって、それを知られたくなくて、咄嗟に叫ぶ。 「あ、いつも通りだ」 「……もー、なんだよ。用ないんだろ? オレは帰るから!」 また、こいつのペースに飲まれかけてる事に気付き、なんだかムカついて話を終わらす。 実際、用はないんだから、そう言っても可笑しい流れじゃない。 「ちょっと待って」 けれど、先週と同じく、奴の声と共に腕を掴んで止められる。 「お前、なん……」 「いつもそうだよね。あのさ、俺は君に何か嫌な事した?」 「……」 文句言おうとしたのに、中断するように、奴が聞いてい来る。 さっきみたいに、からかってる様子でもなく、表情が真面目だったから、言葉につまって、何も言えずにいた。
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