297人が本棚に入れています
本棚に追加
「特に何かした訳じゃないんなら……なんで、そんな邪険にするの? そんなに俺が嫌い?」
首を傾げながら奴はそう言ったが……実際、オレとしてもどうしてこんなに奴の顔を見るだけでムカムカするのか、分からずに居た。
最初は……暗い奴だと思った。
二度と、関わりたくないと思った。
けれど、2度目にあった時は……格好いいと思ってしまった。
でも、その感情を素直に認めてしまう自分が許せなくて、嫌だと思った。
そして……毎日待ってるあいつに、しつこいなぁ思う気持ちが大半だけど、その中のホンの少しだけ何故か嬉しく思う気持ちがあるのは……認めたくないけれど、事実だ。
だから、先週のオレは気付いたらその事ばっか考えて悩んで……混乱してた。その所為からなのか、奴の顔を見たときは、必ずこうして当たってたんだ。
「なんか……苦手なんだよ」
自分でも原因が分らない、このイライラする気持ち。
つい、その勢いで嫌いと口走りそうになるのを何とか止めて、言葉を選んで告げた。
そうしたのは、「嫌い」と言ってしまったらもう、こいつが現れない気がしたから。
「苦手? 俺の何が?」
「……っ! 何がもなんもない! お前の全部だ!」
さっきは感情を抑えてたのに、突っ込んでくるから、今度は勢いで言ってしまった。
「あ……」
気付いて、手で口を封じた時には……もう、遅かった。
奴は、俯いてしまって、暗い表情を浮かべている。
「そんなに……俺が嫌なんだ。じゃあ、もう二度と君の前に姿を現さないよ」
いつもより低い声で静かに告げ、奴はオレに背を向け、去っていく。
「あっ……」
あんなこと、言うはずじゃなかったんだ。
ただ……オレにも何故あいつを苦手だと思ってしまうのか分からなくて……考えてたらぐちゃぐちゃになって。
それなのに、こいつか突っ込んで聞いてくるから、余計にイライラして、つい……八つ当たりしてしまったんだ。
あいつは……何も悪くないのに……。
最初のコメントを投稿しよう!