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「聖、遅かったね」
悪化した。
放課後、オレが掃除を終えて一人で下校していると、校門付近でその声がする。
しかも、奴の周りには、やっぱりオレの学校の女子が集まっていて、きゃーきゃー騒いでいる。
そんな状況でいきなり奴が、オレの下の名前を呼び捨てにしながら話しかけるもんだから……女子は皆オレを見る。
『どういう関係なの?』と言いたそうな顔で。
そして、向けられる複数の視線は、こっちを怖気づかせるには十分な威力を持っていて……オレはかなり居心地が悪くなる。
「……まぁな。お前は相変わらず暇そうだな」
だから、それだけ言い残してスタスタとそこを去る。
「聖、待ってよ」
「なんで」
以前、流れで名前を教えてしまった事を、後悔した。
だって、名指しで呼ばれたら、無視できなくなったからだ。
追いかけてくるのが分ってるから、オレは足を止めずに歩き続ける。
しっかし、こいつ……何で毎日毎日、オレの帰りを校門で待ってんだよ。なんて思いながら振り返れば、ぎょっとした。
そこには、オレを追ってきた仁木――そして、奴を追ってきた女子達の集団があったからだ。
「聖、やっと止ま……」
オレが振り返った事に奴はホッとしてたけど、さっきの異様な光景を前にして、こっちは立ち止まれるわけも無く……再びそこから逃げさる。
「え……聖、何でまた逃げるの?」
「ば、ばか! う、後ろ見ろよ」
オレがとった行動に、不満を漏らした奴に、すぐさま言ってやった。
あいつ一人だけでも迷惑してんのに、あんな集団に後付けられたら、誰でも逃げるって!
「あ……なんだ、皆ついて来たのか……」
だけど……オレに言われて振り返った仁木は、驚き一つしないで、平然としていた。
何だ、こいつ……。皆、お前を追ってきてるのに……何でそんな、呑気なんだ?
「そうだ。いい事思いついた!」
奴があんまりにも他人事の様に言うので、思わず呆れていたら……どうやら、あの女子集団を追い払える、いい案が浮かんだようだ。
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