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あれから、一ヶ月が経った。 別に、あいつが本当に現れるか待ってたんじゃないんだけど……あの時、近くに居たオレの友達が、冷やかしてきたから、思い出しただけだ。 「あの眼鏡君、現れっかなぁ?」 「知らない」 「イライラしちゃって。おーこわっ」 「うるさいなぁ。さっさと帰れよ」 「はいはい。言われなくても、そーする。このままだと、お前の蹴りがやってくるからな。じゃあな」 「あぁ。じゃあな」 本当に現れるかなんて、期待しちゃいない。 ただ……もし現れたときの事を考えて、その時は……どう言えばアイツが諦めてくれるんだろうとは、少し考えた。 「あのっ……」 「え?」 考えてたら、後ろから急に腕を引っ張られた。 驚いて振り返ると……そこには、美形の男が立っていた。 よく見たらそいつは、近くを通る人(ほぼ女性)の注目の的になっていた。 そして思わずオレも、彼の整った顔立ちに見蕩れてしまって……返事するのにワンテンポ遅れた。 「なん、ですか?」 「あれから、一ヶ月、経った。言われた様に、眼鏡からコンタクトに変えたし、髪もスッキリさせた。だから……仲良くなりたいし、話を、聞いて欲しい」 「えっ……」 彼の口から発せられた言葉を聞き、思わず目が点になりそうだった。 だ、だって……どう考えても詐欺だ。 一ヶ月前は、暗そうな印象さえ覚えた。仲良くしたいと言われた時、こんなヤツを隣につれて、歩けるかよとさえ思った程だ。 なのに、今目の前に居る奴は……魔法にでもかけられた様に、キラキラと輝かしい。 そして、同時に……ショックだった。 だって、眼鏡と髪型かえるだけで、こんなに変化する人間居るのか? 同じ男なのに、不覚にも「格好いい」と思ってしまったし。更に言うと……こいつに見蕩れてしまってた。 「……嫌です」 だけど、オレはギリギリの所で意地を張った。 だって、容姿が変わっただけでコロッと態度を変えたくない。 初対面であんなキツメの態度を取ったんだから、いきなり優しくなるのは……オレの性分にあわなかった。
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