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けれど、少しやせ我慢を強いられるのも、否めなかった。態度を変えたくないけれど……ちょっと話でも聞いてもいいんじゃないかなんて、傾く自分もいた。
そう思える位に、奴はオレが言った事を守って、かなり変身してきたのだから。
「どうして?」
残念そうに奴が言う。その顔ですら、女性がはぁーと、惚けるには十分なものだ。
「いや、どうしてって……。その……」
この顔でジッと、見つめ続けられていては、言いたい言葉もすぐに浮かばない。
「遠慮せずに、言って欲しい」
言葉に詰まってると、奴からそう言われたけど、その顔でジッと見つめるのは止めてくれ。
「ほら、だって。あんたが話したいのって、告白の続きだろ? オレ、そういう趣味ないし。男同士はちょっと……って、思ったんだよ」
「ふぅーん」
こっちが一生懸命に答えたって言うのに、向こうは思いっきり納得してない顔してる。
やっぱ、ダメなのか?
ちゃんと、話を聞かないと、ダメなのか??
「じゃあ、しょうがない。こっちのペースで行くだけだ」
「へ?」
「この一ヶ月、俺がどれだけ頑張ったか、たっぷりと教えてやるよ」
「え?」
耳元でそんな声が聞えたなぁと思えば、時は既に遅し。
気付けば、奴に後ろから抱き締められていた。
おまけに。
「覚悟してろよ」
その言葉と共に、頬にキス。
「わっ……」
オレの思考回路は停止し、足は力が入らず、自分で立てないときた。
それをいい事に奴が、寄りかかってくるオレの身体を抱き締めながら、ニッコリと笑ってる。
こいつ、外見だけじゃなく……中身も変わってしまったのか?
それすら考えるのも虚しく……オレの先行きが不安になった、一ヵ月後の今日だった。
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