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「やぁ」
またかよ……。
放課後、学校の門の所でその声を聞き、声に出さずに心の中で言った。
声のする方を見れば、周りには、オレの学校の女子がキャーキャーと、黄色い声を上げ続けている。
勿論、さっきオレに声を掛けてきたのは、その群がってる女子の一人なんかではなく、(むしろ、そっちのが嬉しかったんだけど……)その真ん中にいる、やたら美形のイケメン君だ。
そいつの名前? そんなの、知ってる訳がない。
出会ったのもつい最近で――初対面なのにいきなりこいつが、オレに告白してきたんだ。
しかも、その時はこんなイケメンな状態じゃなくて、ダサダサ眼鏡をかけて、髪型も前髪が鬱陶しいぐらい伸びてて、もっさりしてた。
誰が見ても、暗そうな印象を与える男だった。
だから、オレは彼からの突然の告白を断った。
見知らぬ男からいきなりっていう、普通では考えられない状況だったっていうのもあるけど、それ以上に、こんな奴に好かれても、嬉しくないと思ったからだ。
なのに、こいつはあっさり引き下がってくれなくて、話だけでも聞いて欲しいと言われ、あまりにも厄介だったから咄嗟に、条件を告げたんだ。
1カ月はオレの前に姿を現さないでくれと。
そして、ダサい眼鏡を外して、髪の毛スッキリさせたら、考えてやると言っちゃったんだ。
思えばそれが……事の始まりだった。
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