294人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
「気になるんだ? どうしようかなー。教えてもいいけど、何もなしで教えるのもなー」
「ちょ……! なに勝手に、話し進めてんだよ! 別に気になってないし!」
「急に黙ったから、図星だと思って」
「ちっがう……!」
「そんなに全力で否定しなくても……。そんなに、俺の事が嫌い?」
「……」
はぁ……と小さくため息をつきながら、続けて奴が言ってきた言葉に、オレは再び黙った。
さっきは、ペースに飲まれたくなくてだったけど、今度は違う。
いきなりそんな事言われても、なんて言えばいいか分らなかったからだ。
「……そう、じゃあ今日はもう帰るわ。じゃあね」
「えっ……」
そんな、あっさり……。
再び小さくため息を吐いた後、少し寂しそうな顔を浮かべて、奴はオレに背中を向けて、帰って行った。
今までの事を考えると、てっきり奴の事だから、もっと色々と言ってくると思ったのに……。
拍子抜けしたオレは、暫くボーっと立ち尽くしてたけど、あいつが大人しく帰ってくれたんならいいじゃん! と思って、自宅へ向かって帰った。
あいつが再び現れてからの3日間、校門からこの道までしか、歩いた事がない。
昨日までの2日はオレが奴を振り切って帰ったけど、今日は初めて向こうが先に背を向けて帰った。
望んでた事なのに……別れがけに小さく吐いたため息と、表情が引っかかって……。
何だか素直に喜べなかった。
最初のコメントを投稿しよう!