0人が本棚に入れています
本棚に追加
自分はただ、困っている梨沙を助ける手段として金銭的援助をしたいだけなのに。
西田は工藤が自分より金を持っていて、女の子をたすけてあげられるから妬ましいのだとまで思った。
「俺の金をどうしようが俺の勝手だろ」
怒りを顕にしながら西田は自分の口座から100万円を下ろした。
「絶対に騙されてる」
工藤は真面目な顔で西田に訴えかける。
「騙されてなんかない」
梨沙が俺に嘘をつくとは思えない。
確かに梨沙は、欲しい車があって、それは高いから貯めたお金じゃ足りないけど親には内緒にしたいと言っていた。
その瞬間西田の電話が鳴った。
知らない番号からだった。
「はい」
「西田、蒼太さんですね?」
聞き覚えのない、男の低い声だった。
「そうですが、どちら様ですか?」
「警察です。」
西田は一瞬、自分がなんの罪を犯したのかと一生懸命考えを巡らせた。
「自分、何かしましたか…?」
恐る恐る西田は問いかけた。
「いえ、あなたはむしろ被害者です。」
「どういうことですか?」
「最近、リサと言う名前でメールが届きませんでした?」
西田はドキリとした。
「来ました」
「その主が、この度詐欺容疑で逮捕されまして。梨沙と言う名前で複数の男性に詐欺を働いていたようなんですよ。」
「まさか…」
「そう、あなたは騙されたんですよ西田蒼太さん。まだ、現金を手渡される前に分かって良かったです。また、再度御連絡しますので。」
「はぁ…」
地獄の果に落ちていった気がした。
あの舞い上がる気持ちは。あの、ときめきは何だったんだろう。
話が聞こえていたらしく工藤が言った
「やっぱり騙されてたんだよ。」
俺は梨沙の思いどうりに動かされていたのか。
一通のメールがきたあの瞬間から。
最初のコメントを投稿しよう!