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「おまえは俺が誰かにプロポーズして結婚しちゃってもいいのか?」
いいわけない。そんなの嫌に決まっている。
でも、私は所詮、お隣さんに過ぎないんだ。
「いいも何も、お兄ちゃんが幸せになるんなら」
「俺が幸せになるなら、誰と結婚しても構わないんだ?」
「だって、お兄ちゃんは命の恩人だし、大事な……大事なお隣さんだもん」
自分で自分の言葉に傷つくなんてバカみたいだ。
無理に微笑もうとしたけど、たぶんうまくできていない。
大きく息を吸ったお兄ちゃんが私の目をひたと見据えた。
「俺は嫌だ。おまえが他の男と結婚するなんて。交際するのだって耐えられない。”大事なお隣さん”だからじゃないぞ。おまえが好きだから。命を投げ出しても守りたいのは七瀬だから」
お兄ちゃんの目は真剣そのもので、嘘や冗談を言っているとは思えない。
でも、そんな夢みたいなことあるわけない。
「何言ってるの? だって、お兄ちゃん、プロポーズしたい人がいるんでしょ?」
「俺がプロポーズしたいのは七瀬だよ! 俺が愛してるのはおまえだけ。ずっとおまえと結婚したいと思っていたんだ。でも、おまえが俺をどう思っているのかわからなくて。振られたら、もう仲の良いお隣さんにも戻れなくなる。それが怖くて、告白もできなかったんだ」
「嘘……」
私の目から涙が溢れて、お兄ちゃんは優しい目で私を見つめながら指で拭ってくれた。
「なんで泣く? 俺に申し訳なくて? それとも……嬉しくて?」
お兄ちゃんはもう答えがわかっているみたいだ。
「嬉しくて。私もお兄ちゃんが好き。大好き!」
「七瀬!」
ベッドから背中を離そうとして力尽きたお兄ちゃんは悔しそうに枕に沈み込んだ。
「ああ、チクショウ! 抱きしめることもできない」
「無理しちゃダメだよ。傷口が開いちゃう」
慌ててお兄ちゃんに手を伸ばすと、意外なほど強い力で掴まれた。
「キスして、七瀬」
こんな甘いお兄ちゃんの声を私は知らない。
「む、無理! キスなんてしたことないもん」
「俺もだよ」
そう囁いたお兄ちゃんは私をグッと引き寄せて、そっと唇を重ねた。
END
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