18人が本棚に入れています
本棚に追加
『勇者様…この子、走りたいって言ってる』
彼女はテシ族の人間。タカノリには分からないが馬の感情を読み取る能力を持っていたとしてもおかしくはない。だが…
『外には出ちゃダメだって言われただろ』
『…』
タカノリの諭すような言葉にジーナは黙って俯いた。そして馬の首に手を伸ばし、ごめんねと言いながら優しく撫でる。その姿を見たタカノリは大きなため息を漏らした。
『ジーナ、少しだけだよ』
思いもよらない言葉にジーナが顔を上げた。その瞳はきらきらと輝いている。タカノリは馬を厩舎から出すとジーナに言われる通りに馬に手綱を掛けた。そして彼女を馬に乗せるとその後ろに乗る。
『言っておくけど、俺は自分で馬に乗ったことないからね』
『大丈夫。手綱は私が持つから…』
嬉しそうな声で答えたジーナは手綱を引いた。タカノリは彼女に言われるまま一緒に手綱を握っていた。
『力は入れないで』
そう言われタカノリは頷いた。彼女は馬のスペシャリスト。彼女の言う通りにしなければ、彼女に怪我をさせてしまうかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!