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巨大なその虹は町のオレンジの自然の色と人工的な色とでコントラストのようなものをとっていた。ビルディングや町の中央に位置している塔。行き交う通行人もみなオレンジ色であった。
隆はアーチ状の虹の面に、どうにか水平にくっついているような町の外れに車を停め。外壁で囲まれた街の入口の大通りから町へと歩いて行った。
人口約3万6千人の小さい町である。
オレンジ色の服を着た中年男性がジョギングをしている。その男は車が行き交う大通りの脇をこちらに呼吸を乱しながら走って来た。年は30代後半で、服装はオレンジ色のランニングシャツと短パンだ。隆は興味本位で中央に位置している塔を尋ねた。
「あれは、日差しの塔ですよ」
その男性は出っ張った腹を気にしているようで、しきりにジョギングの最中の足踏みをして汗をかいて隆に話をしていた。
「実は両親を探しています。玉江 隆太と佐藤 江梨香です。ご存じありませんか?」
隆はジョギングの最中に悪いとは思ったが、言わずにおれなかった。
「いやー、この町は広いですからね……」
男性は足踏みを止めて禿頭をピシッと叩いた。
「そうだ。日差しの塔の町長に聞いてみては、そこで調べてもらえば解りますから。私はジョシュァといいます。この町でペットショップの支店長をしています。どうせ、この町に来たのなら最初に町長に挨拶と滞在期間を言わないといけませんから。あ、そうだ。私がご案内しますよ。未来の顧客になりそうですからね」
ジョシュァは人懐っこい顔をして、どこか寂しそうな隆の表情に目聡く気が付いたようである。どうやら日差しの塔までジョギングを止め、隆を親切に案内してくれるようだ。
隆はジョシュァと歩いて町の中央まで行くことになった。
バスや自動車は地上を走り、行き交う通行人も真面目に働いたり、生活をしているようで、おおかた背広姿や学生服が目立った。
けれども、みなオレンジ色に染まっていた。
大通りをしばらく歩き、交差点に差し掛かった。
道路標識や看板などもオレンジ色だ。ただし、信号機は別。
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