倫ではないということ

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あの時を思い返すと… 至極勿体ないことをした。 それは中学生のとき。 クラスに「デカミ」というニックネームの女子がいた。 彼女はお世辞でも可愛いとは言えない容姿で、体は丸々としていた。 まるでいじめのように周りにこそこそ噂されるデカミ。 彼女のスタイルは日々、丸くなっていく。 彼女自身、ストレスを食べることにぶつけてしまうのだろう。 そんなある日だった。 彼女はお弁当を落とした。 唐揚げがたくさん詰まったお弁当箱の蓋が空いて、中身はもちろん教室に散らばった。 掃除がいいかげんで、砂やわたぼこりなんて当たり前の教室だ。 周りはクスクス笑った。 「大切な餌が落ちちゃったね」と。 彼女は、お腹の脂肪が邪魔して苦しそうに屈むと、唐揚げをすべて拾い上げた。 そしてそれを口へ… 「…お、おい!いくら腹が減ってるからってそれ食うなよ!」 無意識に、叫んだ。 俺は彼女の目の前まで走っていた。 「俺の…ハンバーグで良ければやるから」 俺は彼女にハンバーグをあげた。 彼女は驚きながらも、嬉しそうに言った。 「ハンバーグも好き」だと。
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