倫ではないということ

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あれから22年。 俺は36歳になった。 平凡だけど、妻子にも恵まれて幸せである。 妻が、まだ幼い子を寝かしつけながら一緒に寝てしまった。 俺は静かにビールを飲みながら、深夜のテレビを楽しむ。 今日も、いつもと変わらぬ一日だった。 その瞬間まで。 俺も眠くなってきて、テレビを消そうとした瞬間だった。 「最近人気急上昇中の、丸田山清美さんです!」 「こんにちは~、よろしくお願いします!」 テレビで紹介されたその女性は、聞き覚えのある名だった。 「あんなにデカいなら、清美じゃなくてデカミだよな」 誰かがつけた、あのあだ名。 本名は同じ、丸田山清美である。 「…デカ…ミ?」 嘘だろ。 俺の眠気は一気にさめた。 テレビに映ったその人は、デカミとは別人だけど本人だったのだ。 声も、仕草も、面影も。 デカミなのにデカミじゃない。 全然デカくないんだ。 むしろ細くて、でも胸だけは当時のままみたいに大きくて…すごくスタイルが良くて。 とても美しかった。
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