倫ではないということ

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俺は手紙を書こうと思った。 だが、俺には妻と子供がいる。 そんな俺を彼女は愛してくれるだろうか…? でも、俺にはなんとなく自信があった。一度は愛してもらえたから。 彼女となら思春期みたいな、そんな激しい恋愛ができる気がして。 俺は毎晩毎晩、彼女を想って静かな夜を過ごした。 ある朝。 朝食の準備をする妻の後ろ姿を確認しながら、俺は鞄にこっそり封筒をしまった。 謝罪や感謝、好感や激励を記した不器用な手紙を書き終えたのだ。 仕事に行く途中、ポストにいれていこう。そう思った瞬間だった。 「なんとあのタレントに不倫報道です!!」 リビングのテレビが急に騒がしくなって目を向けた。 「初スキャンダル!なんとあの清楚系タレントの丸田山清美さんが、既婚の俳優と…」 俺は抱えていた鞄を床に落とした。 清美…!?デカミのことだろう!? あいつ何してるんだよ…。 衝撃を受けながらも、後悔が押し寄せてくる。 もしかしてその相手は、俺にもなれたのかもしれない。 もう少し早く手を出していれば、妻子持ちの俺にもチャンスはあったかもしれない。 あんな美人と毎日晩酌できる夢のような夜を。
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