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「いちおうデザイン事務所でバイトしてたからな」
「こういうの作ってたのか」
「んー、どっちかって言うとWebデザインのほうだけど、販促物とかも上司の手伝いで少しな。まあ、なんでも屋みたいな感じだ」
「おまえ美術とか得意だったっけ?」
「いや、全然」
「それでこれか、人間、やればなんでもできるもんだな」
「褒められてんのか?」
「山ちゃん、チラシの出来はともかく、それ見てツアーに参加したくなるかどうかが問題なの。どう、その辺?」
「あー、そういうことね。うーん、どうだろう」
「どうだろうって?」
「いや、お墓参りに行きましょうって言われてもって」
「俺もチラシ作りながらそのキャッチコピーは違うと思ってた」
「なによ、ヒークンまで。だって、首都圏有名墓苑巡りバスツアーだよ、お墓参りに行きましょう以外ないじゃない」
「んー、なんかさ、おまえが旅行代理店始めるって言い出したのって別に墓参りがどうこうじゃないよな」
「そうだよ、北海道で村田さんと写真撮ったじゃない、ああいう、別れた人との思い出を取り戻すっていうか、うまく言えないけど、心に残る旅を提供したいの」
「だろ。それって墓参りなのか」
「でも、お客さん集まるかもってヒークンのお父さんが」
「まあ、そうなんだけどさ。そもそも墓参りのバスツアーは旅行なのか?」
「なに言ってんのよ。バスツアーは旅行よ。決まってるじゃない」
「でもさ、墓参りに行きたいのか旅行に行きたいのか、どっちなんだよ」
「んー、どっちなんだろ。ダメだ、酔っ払ってわかんなくなってきた」
「ていうかさ、おまえが言ってたけど、思い出なんだろ、ポイントは」
「そうだけど」
「墓参りって言うより、今は会えない誰かとの思い出っていうのがポイントなんじゃねえの」
「んー、どうなんだろう」
「櫛田、おまえ、それ間違ってるぞ」
山川は急にしっかりした目で浩人を見た。
「なんだよ、山川、どういうことだよ」
「あのな、内製にこだわると商売っていうのは縮小すんだよ」
「はあ?」
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