企画立案

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 資料の詰まった重い鞄を肩から降ろした里佳は倒れるように椅子に身体を預け、大きなため息をついた。 「どうだった」  浩人が恐るおそる声をかける。 「全然ダメ。どこへ行ってもいちおう興味は持ってくれるんだけど、結局、難しいんじゃないのって言われちゃう」  櫛田葬儀店の一角を借りて始めた旅行代理店の営業で毎日あちこち昔の顧客を訪ねて歩き回っていた。 「まあ、そうだろうな」  浩人は里佳を下手に刺激しないよう気をつけていた。ここ最近の里佳は明らかに気が立っている。 「それはそうなんだけど、やっぱりニーズ無いのかなあ」  里佳は机の上でノートパソコンを広げる。 「あ、アクセスログな、チェックしといたけど、ほとんど無いぞ」  旅行代理店のWebサイトは、里佳ちゃんのために出世払いでやれと三国から言われてしぶしぶ作った。無料のサービスを使った簡単なものだ。アクセスは今のところ毎日4回ずつ。浩人と里佳が朝と晩に見ている分だけがカウントされ続けている。 「あー、Webサイトのアクセスも全然増えないんだ。本当に、どうしたらいいんだろ」 「まあ、作って置いとくだけじゃこんなもんだろ」 「他に何すればいいのかなあ」  里佳はうんざりしたようにノートパソコンを閉じた。 「宣伝用にSNSとか? まあ、それですぐにアクセス増えたら苦労ないけどな」 「んー、SNSなら移動中でもスマホで出来るけど……、どう思う?」 「どう思うもなにも、やりたいならやってみたらいいじゃん」 「んー、別にそんなにやりたくもないんだよね。それに今のところネタもないし」 「なんか、旅行ネタとか業界ネタとか、そういうのでいいんじゃねえの」 「そういうの苦手なのよね」 「おまえに苦手とかあるのかよ」 「いっぱいあるよォ。ありすぎ」 「ったく、しょうがねえなあ。やらない理由考えてる暇あったらなんかやってみろよ」 「あ、なんか前の職場の上司みたいなこと言ってるよ。ポジティブシンキングっての? でもさあ、ポジティブだろうがネガティブだろうが結局は潰れちゃったんだよね、あの会社」 「なんか、今日のおまえ、いつもに増して毒あるな」 「しょうがないよ。営業さっぱりなんだもん。あーあ、お客さんって、どこにいるんだろ」
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