3人が本棚に入れています
本棚に追加
「なるほどー、そういうお年寄りを集めてお墓参りのバスツアーですか!」
「いや、そうなんだけど、それだけじゃなくてね、そういうお年寄りが集まってる場所があんだ」
「えー、そんなところが?」
「そうよ。あんのよ、そんなところが」
「どこだよ、それ」
「浩人、おまえは口を挟むな」
「どこなんですか?」
里佳は話に食いついていた。
「特別養護老人ホームだよ」
「老人ホーム?」
「そう、老人ホーム。特別養護老人ホームのジジババがね、先にお隠れになった配偶者の墓参りに行きたいって言うんだよ」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。でね、自分ひとりじゃ行けないっていうか行くのが大変なんだ。家族に連れて行ってもらうったって、あれだよ、家族もいい顔しねえんだ」
「なんか、お気の毒ですね」
「そうなんだよ。お気の毒。でもな、考えてもみなよ、ボケちゃった年寄りの身の回りの世話するのだって大変なのに、車や電車で墓地まで連れてくのなんてなあ、里佳ちゃんも分かるだろ、大変なの」
「想像するだけですけど、確かに大変そうですね」
「だろ? でもな、だからこそそこにチャンスがあんじゃないかってな」
「チャンスって?」
「里佳ちゃんの仕事に決まってッだろうが」
「私の、仕事?」
里佳は首を傾げた。
「どういうことだよ、なに、ジジババ集めてバスツアーってこと?」
すっかりクエスチョンマークで一杯になってしまった里佳に代わって浩人が聞いた。
「要はそういうこった。ただな、それだけだと大変なだけだ。だから、これだよこれ」
三国は墓苑見学ツアーのチラシを持ち上げた。
「だって、それは無料だろうが」
「おまえはバカか。こりゃ墓石販売会社が墓売ろうってツアーだから無料なんだよ」
「どういうことだよ、わかんねえよ」
最初のコメントを投稿しよう!