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最初に行くならここがいいと三国が紹介してくれた特別養護老人ホームは、里佳が想像していたものより遥かに大きかった。
一回りして職員用の入口を見つけた。まずはほっと胸を撫で下ろす。覚悟を決めるようにもう一度深呼吸してからインタフォンのボタンを押した。
一回りぐらい年上に見える女性職員の山本さんは、あまり時間を取れないからと言いながらも立派な応接室に通してくれた。
「わかりました。このチラシを置いておけばいいのね」
浩人が作ったチラシだった。
「はい。よろしくお願いいたします」
里佳は急いで立ち上がり、深々と頭を下げた。
「櫛田さんの紹介じゃねえ。あんまり期待しないでくださいね」
山本さんが苦笑しているように里佳には見えた。
「櫛田さんは有名なんですか?」
「ええ、まあ、病院とか経由してお付き合いもありますから」
「あ、なるほど」
年寄りが集まる場所は三国の商売とも関係している。里佳にも要約合点がいった。
次に訪れたのホームは平屋建てのアパートのような寮のような建物だった。
応対してくれたのはまたも女性職員だった。
「櫛田さんの頼みじゃしょうがないわね」
エプロン姿の金子さんは事務室の一角で話を聞いてくれた。
「ウチでは個別に案内はかけられないから、あんまり期待しないでね」
「よろしくお願いいたします」
里佳は腰が直角に曲がるぐらい頭を下げた。
「そんなにしないで。こっちが恐縮しちゃうわ」
金子さんが朗らかに笑った。
その次に訪れたのは3階建ての、やはり寮のような建物だった。
ここでも応対は女性職員だ。
「チラシ置くだけならいいわよ」
「あ、ツアーへのお申し込みがあった場合は御社への手数料も……」
「いいわよ。多分無いから。ホント期待しないでね」
「あの、こちらの建物は?」
「ああ、ここは昔、大手のメーカーの社員寮だったの」
「あ、私、覚えてます」
「ご近所なのかしら。多いのよ、社員寮からホーム」
「そうなんですね」
「じゃね。。櫛田さんによろしくね」
「わかりました。よろしくお願いいたします」
また、頭を下げていた。
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