第1章

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正直言ってこんな非現実的なものを目の当たりにして普通でいられるほど『俺』の神経は図太くない。もう既にキャパシティオーバーである。 だが、そんなこと知りもしない目の前の『そいつ』は淡々と話を進めていく。 「……で、貴方が今回の自分の仕事相手ですね?うん、合ってる。じゃあ、突然で悪いんですけどこの花持っててくれます?」 と言ってどこから取り出したのかわからない資料を確認しながら、『俺』に紅紫色の花を差し出してきた。 『俺』が花を受けとると同時に『そいつ』はまた喋りだす。 「えっとですね、その花は君の“未練”です。君がその未練を終わらせるまで花は消えませんし、自分も四六時中君に引っ付いていないといけない……。正直言って非常に面倒臭いです。だから早く君の未練を教えてくれませんかね?じゃないと解決のしようもないので」 「はぁっ!?いやいや、面倒臭いじゃねーよ!?死神の仕事ってよくわかんないけど職務怠慢してんじゃねーよ!!!てか、未練って何!?勝手に人死んでるみたいに言うのやめてくれる!?俺まだ生きてるから!!!」 と、一気に捲し立て肩で息をする『俺』に対し、目の前の『奴』は一呼吸置いてからまた『俺』に話しかけてきた。 「おぉー、よく自分が死神だってわかりましたね、凄いです。ただ、一つだけ言わせてもらいますけど、自分職務怠慢なんてしてませんよ?仕事は面倒臭いと思いますし、たまにサボタージュしますけどきちんと働いてますよ、一応」 「いや、いくら面倒だからってサボりは駄目だろ……。て言うか死神以外当てはまらないだろお前のその格好」 「そうなんですかね?今まで、自分死神ですって言うまで誰も何も言わなかったから分かりにくいのかなーって思って過ごしてきましたけど、ツッコミを入れられたのは貴方が初めてです」 (いや、そりゃお前のインパクトが強すぎて皆何も言えなかったんだよ!!) などということを心の中で思っていたら、『死神』は更に面倒臭そうに呟いた。
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