第1章

4/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「……あぁ、やっぱり貴方、自身が死んでしまっていることに気付いてないんですか……。それに、記憶も失ってる……。これじゃ、未練を聞き出せないじゃないですか。はぁ、本当に面倒臭い……」 恐らく一人言として呟いたのだろうが、その呟きはダイレクトに『俺』の脳内に響きわたった。 そして、その言葉には『俺』を混乱させるには十分な威力を持っていた。 「えっ、ちょっ、ちょっと待てよ……!!お、俺が死んでるってどういうことだよ……!?」 胸の内に広がった不安を隠すこともせず『俺』は『死神』に問いかける。 「そのままの意味ですよ。貴方は既に死んでいるんです。もうこの世界の人間ではないんですよ貴方は」 目の前で淡々と話す『死神』の言葉を受け入れたくなくて『俺』は必死に叫んだ。 「だから俺はまだ死んでないんだって!!!何で勝手に殺すんだよ!!!死んだって決めつけんなよ!!!!!俺はまだ生きてる!!!!だって俺は『あいつ』と約束したから……!!!!約束したんだよ……!!!そう約束……、あれ……、俺誰と約束したんだっけ……?て言うか俺の名前って何だっけ……?俺って誰だっけ……?……あれ?あれ?何で何も思い出せないんだよ……!?」 威勢がよかったのは最初だけで『何か』を思い出そうとするにつれ『俺』の声はどんどん小さく、また弱くなっていった。 「すみません、貴方が未練を終わらせるまで自分と貴方はリンクしているから、自分のどんな小さな一人言も貴方に聞こえてしまうというのを失念していました。ですが、どうしたって最後には自身の死を受け入れなければならないので、遅いか早いかの違いだけなんですけどね」 残酷な言葉を『死神』は淡々と紡いでいく。その言葉を聞きながら『俺』は、自身の首元に剣を突きつけられているような感覚に陥った。 「あっ、でも未練が“誰かとの約束”であるというのだけでも分かってよかったです。何もないよりはマシですからね」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!