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それと同時に持っていた紅紫色の花が細かな粒となって消えていった。
「どうやら貴方の未練がなくなったみたいですね」
いつの間にか隣にいた『死神』に話しかけられた。
「そう、だな。……あのさ、少しだけ歩きたいんだけどいいかな?行きたい所があるんだ」
その言葉で察したらしく『死神』は黙って頷いた。
「せっかくなので案内します。ついてきてください」
「案内してもらわなくても行けるけど……、まぁ、いいや、お願いするよ」
それから『俺達』は話をしながら、ゆっくりと歩きだした。
*****
少し遠回りをして、俺達は目的の場所に着いた。そこにはどうやら先客がいたようで“俺”に向かって手を合わせて、そして話しだした。
「あのね、今日剣道の大会だったんだよ?あんたが『絶対観に行く』って言ってた。私、優勝したんだ、でね、あんたに一番最初に伝えたくて表彰式すっぽぬかして来ちゃった。あんたが知ったら怒りそうだけど」
そう言って彼女は微笑んだ。
「…………私、あんたが居なくなったこと受け入れられなくて、でも、もしかしたら来てくれるかもって思って、頑張って決勝まで行ってさ、けどやっぱりあんたは来なくて、私負けそうになっちゃって………、でもその時あんたの声が聞こえたんだよ『優勝するんだろうが!!!!情けない試合してんじゃねーぞ!!!!!』って、その言葉聞いて、あぁ、来てくれたんだって思ったら嬉しくなって、不思議と力が湧いてきて勝てたんだ。ありがとう。………っ、うっ………ご、めんね……。あんたの前では泣かないって決めてたのに……。でも、もう泣かないから、あんたがもういないってことちゃんと受け止めるから……!今まで、本当にありがとう…!!!」
「……っ!!俺も……、俺の方こそ今までありがとう……!!!」
堪えきれなくなった涙は彼女の頬を伝い落ちていった。そんな彼女の姿を見ていたら俺の視界もぼやけ始め、俺の目からも涙が流れていった。
彼女は涙を拭いながら俺に一輪の花を見せた。
「この花ね、シオンって言うんだって……。花言葉は……『君を忘れない』」
その瞬間、俺の体が小さな粒になって空へと昇り始めた。
「……悲しいですか?」
「いや、俺は幸福者だったなって思ってる」
「そうですか……」
死神と最後の言葉を交わし、俺は消え行く体で微笑んだ。
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