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「刑事なんだから怪我くらい…んっ」
因幡が反論する前に唇同士がふれあい、言葉を奪った。
甲斐は因幡に比べて言は立たない。
代わりに表情が因幡に告げる。
自分の愛する者が傷つけられた怒りと、自分以外が痕をつけたことに駆り立てられた独占欲、複数の感情が入り交じり、因幡を縛り付けたい、見守りたい、愛したいと雄弁に語る。
甲斐は笑った。
にへらと能天気な甲斐警部としてではなく、獲物に食らいつきたい本能と恋人を守りたい慈愛に揺れるひとりの男、甲斐千影は、ひどく蠱惑的であった。
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