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★
僕たちは家族になった。
三か月もすると幸恵が不安そうな顔で尋ねてきた。
「ねえ、服買っていい?」
結婚して初めて幸恵がねだってきた。僕は珍しさのあまり幸恵の様子を眺める。金に不自由しているわけではないが、僕たちはそういったものに興味を示さなかったからだ。幸恵は洋服雑誌を見ていて、しきりに首をかしげていた。
初めて衣服に関心を持ったのだからよほど気に入ったものがあるのだろう。ソファで横になっている僕は拒否することはなかった。
「別にいいけど、どこのブランドのを買うの?」
「ブランドっていうか……」
ダイニングで椅子に腰かけている幸恵は僕の動向を探るように、チラチラと見やる。
「ベビー服なんだけど」
「ふ~ん」
気のない返事に幸恵がうな垂れたので、僕はソファから落っこちた。
「まさか」
でも、痛みよりも響いているものがあった。
「嫌だった?」
僕は幸恵を抱きしめた。
「嫌な訳ないだろ」と囁いて。
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