第1章

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 ★ 僕たちは妊娠から迫りくる困難に打ち勝って、といっても幸恵のセコンドについただけであって、僕自身は大したことはしていないのだけれど。  それでも、惠と名付けた男の子に巡り会えた。 「これからはパパって呼ばないといけないかな」  幸恵は新生児を抱っこしながら、僕に問いかけてきた。 「あとからでもいいんじゃない。そんなに早く言葉なんて覚えきれるわけないんだから」  僕の投げ返しに、幸恵は親指を立てる。 「大丈夫私とあなたとの子だから、あっという間にダディまで言えるようになるわ」  ダディ。言われたくはない。 「パパでいいよ」  ぽつりと漏らした僕の言葉に、「よろしくねパパ」と幸恵は僕に世間一般の通り名を与えた。素晴らしい栄誉だった。  
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