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僕は劣悪たる会社の仕組みに鞭打たれながらも、必死になって働き、昇進していった。子どもに構ってやる時間はなかった。帰ってくると、目元にクマを浮かべた幸恵が出迎える。
幸恵はパートを辞めたものの、赤子にはそうとう手を焼いていた。僕の役目はというと、赤子と一緒にお風呂に入ることだけだった。
就寝前には僕は最近になって覚えた煙草をベランダでふかし、息をつく。
それは子供が小学生になるまで変わらなかった。
変化が現れたのは、惠が一年生になってから、幸恵は僕が帰ってきても出迎えることはなかった。最初は疲れが溜まっているのだろうと思っていた。しかし、一週間も過ぎると僕も幸恵の心情を察することができた。
朝食にでてきたパンとスクランブルエッグを頬張って、朝の挨拶もしなくなった。会話は惠を通して語られることが普通になった。幸恵は午前中は手間が空いたからといって、午前中は働きにでかけて、この家は半分無人になった。
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