年の瀬

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「毎日朝には甘いパンが出された。昼の12時と夜の7時には少しだけ量の多い食事が出て、昼の3時にはクッキーが出た。私はそれらを、口にした」 藍が戸惑いながら吐露した。甘い匂いが漂ってきたような気がして、僕は口元を押さえた。 「立花に口にすることを強制されたから?」 藍は眉間に皺を寄せた。自分の爪をカリカリと引っ掻く。 「初めは……強制された。要らないだと言っているのに、無理矢理口の中に。でも次からは私は自分から口にしていた。忘れられなくて」 僕は手帳に記録した。 ≪18:10 食事をすることができた? 中毒性有り? どんな感情で彼女は人間の食事を≫ ハッとした。そこまで書いて自分の字をボールペンでぐしゃぐしゃに塗りつぶした。後ろを振り返る。無機質な監視カメラは僕と彼女を捉えている。小さな虫の鳴くような機械音を鳴らしながら。 「……他に立花との暮らしで何か――…」 「待って」 藍は強い口調で遮った。彼女は机に突っ伏した。イライラしたように頭を掻く。そんな仕草も人間らしい。 「もういい、もういい! わかってる。眞人は助からない。私の記憶も消去される。こんなことに何の意味も無い」 ≪18:13 強い怒りを見せる。人間の食事が個体を怒りっぽくさせるのは本当みたいだ≫
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