年の瀬

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「一見意味の無いようでも、無意味なことなんて無いんだよ」 ボールペンの尻でテーブルをコツコツ叩いた。顔を上げた藍が首をひねる。 「私は飾り用だから、トイレの始末など最低限の事しか教わっていない。新しい事は全部眞人に教えてもらった」 ≪18:23 藍の瞳が少しだけ輝いたように見えた。恋しているみたいだ。他のAシリーズのものと違う≫ 藍は口を何度か開けたり閉じたり、乾いた唇を小さな舌で舐めたりして戸惑いながら僕に問うた。 「あなたも眞人の事を否定する?」 正しい答えはわかるのに、僕は答えることはできなかった。藍の表情が曇る。 「私は眞人に『洗脳』された? みんながそう言った。ここの施設の人も。お医者さんも言った。ねえ、ねえ、教えて」 鉄でできた檻の柵を藍が掴んだ。
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