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動かなくなった藍を担ぐ職員と目が合った。頭の良さそうな銀ぶち眼鏡の男。軽く会釈された。
「大変ですね、記者さんは。こんな年の瀬までお仕事なんて」
「いえいえ。お互い様ですよ。すみませんね、忙しい時に取材なんて」
白衣の彼はくったくなく笑う。
「いえ、今日はもうA-iの人格消去だけで仕事納めなので。すぐに帰れます」
「はあ……」
A-i、藍は立花眞人被告と過ごした1週間の記憶だけじゃなく、リセットされる。ただのお飾り用クローンのA-iに戻る。
悲しみも怒りも人間の食事の味も全て忘れる。白衣の彼が藍を担ぎ直して言った。
「そういえば、知ってますか? 立花眞人は子供の頃、Mシリーズに育てられていたそうですよ。旧型クローンの」
「Mシリーズというと……ああ、給仕用の。懐かしいな。言語が不自由なんですよね。小さい時僕の家にも昔ありましたよ」
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