年の瀬

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クローンの首に印刷された白黒のバーコード。科学技術が発達した今ではそこくはいしか見分けられる場所がない。姿かたちも、全て。僕は尋ねた。 「人間とクローンの違いは何だと思いますか?」 白衣の男は人差し指で眼鏡を上げて、ぶっきらぼうに答えた。 「……スクールで習いませんでした? 自然発生か人工発生かですよ。もう今の技術じゃ臓器も脳も機能的な違いはほとんどない。でも重要なのは、それでもクローンは人間ではないということです」 同じ皮膚、同じ心臓、同じ脳。でも人間ではない。他人のDNAモデルから人工的に作られた偽物の人間。 「リセット後のA-iの処遇は?」 「社外秘です。まあ、また同じように別の人間の手に渡りますよ。そうしないと彼女は生きていけませんからね……今のところはオフレコでお願いします」 僕が曖昧な笑顔で頷くと、白衣の彼は小さく会釈した後、A-iを重そうに担ぐ。 振り返った彼の白衣の襟元から白と黒のバーコードが見えた。驚く僕に白衣の彼は眼鏡の奥で悪戯っぽく笑った。 クローンの動作管理をする、クローン。彼はSシリーズだろうか。サイエンスのSモデル。 メイドのMモデル、自由にカスタマイズできる飾り用のAシリーズ。この世はクローンで溢れている。
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