4人が本棚に入れています
本棚に追加
だが時は、彼に落ち着きという猶予は与えてくれなかった。
程なく、広い室内に響いたチャイムと共に
バスルームから水音が聞こえてくる中、白ワインが運ばれてきた。
そして、ボーイの姿が消えるのを待つかに、
扉の向こうのバスルームが静まり返る。
忍は、再び大きく呼吸をひとつすると、
運ばれてきたばかりのワインの封を切った。
「あの、お先に頂きました」
白いバスローブ姿の彼女が、おずおずとリビングに戻ってくる。
律儀だな、誰の家でもないのに。
ふとそんな事が浮かび、口元が綻ぶ。
だが同時に、何をしても、その一つひとつが愛しくて堪らない。
そんな彼女の目の前に、忍は、よく冷えた白ワインのグラスを
そっと差し出した。
最初のコメントを投稿しよう!