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「今夜の始まりに」
そしてグラスを差し出したまま、そっと微笑む。
途端、小さく目を見開いた彼女が、
何が可笑しいのかクスクスと細く笑いだした。
だがそんな彼女の笑顔が、やっぱり忍は嬉しかった。
そして、細い指で持たれた彼女のグラスに小さく自分のグラスを合わせる。
少し甘めの冷たいワインが心地良く喉元を通り、
夜の始まりを告げたように思えた。
だから忍は、もう一口冷たいワインを含むと
静かにグラスをテーブルに置く。
「ゆっくり飲んでて。僕もシャワーを浴びてくるよ」
そして、そのままリビングの彼女に背を向けると、
彼は、ゆっくりとバスルームへと向かっていった。
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