第15章  もっと近くに(続き)

3/3
前へ
/38ページ
次へ
「今夜の始まりに」 そしてグラスを差し出したまま、そっと微笑む。 途端、小さく目を見開いた彼女が、 何が可笑しいのかクスクスと細く笑いだした。 だがそんな彼女の笑顔が、やっぱり忍は嬉しかった。 そして、細い指で持たれた彼女のグラスに小さく自分のグラスを合わせる。 少し甘めの冷たいワインが心地良く喉元を通り、 夜の始まりを告げたように思えた。 だから忍は、もう一口冷たいワインを含むと 静かにグラスをテーブルに置く。 「ゆっくり飲んでて。僕もシャワーを浴びてくるよ」 そして、そのままリビングの彼女に背を向けると、 彼は、ゆっくりとバスルームへと向かっていった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加