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今度は優しく包み込むように。
私は野上の胸に頭を預けた。
「千奈ちゃんの就職先を調べて追いかけて入社して、やっと同じ支社に異動できたのに、川谷課長に熱い視線送ってるし・・・」
私は短大卒だったから、大卒の野上より先に入社していた。
って、調べたのか。。
「俺、メチャクチャ淋しかった・・・。
仕事押し付けたり、意地悪してごめん」
私を腕の中に抱きとめたまま、野上は私の顔を覗きこんできた。
「千奈ちゃん・・・俺と付き合って?
そしてずっとずっと一緒にいよう?」
照れたように私を伺う野上。
こうやって見ると、優しい眼差しはあの頃と変わらない。
「う・・・うん」
ここで「NO」とは言えない、残念な私。
まだ川谷課長に惹かれたままなのに。
それなのに私は───
「やったー!!」
物凄く嬉しそうに野上が微笑んだ。
その時現れたのは・・・・左ほほのエクボ。
それを見た瞬間、胸がきゅーーーーっと音を立てた。
野上の笑顔は───あの頃と変わらないいっくんの笑顔のままだった。
私の大好きな、あの笑顔。
「・・・・好き」
しがみつくように私は野上に抱きついた。
私は2回目の恋をした。
あなたのその笑顔に。
【終わり】
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