あなたの笑顔に2回目の恋をする

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「千奈と野上君って、本当仲良いよね~」 ここに同期として入社して以来仲良くしている、岡崎美里(おかざきみさと)が箸先を私に向けながらそんなことを言い出した。 ここは社員食堂。 お値段以上な今日のランチはミックスフライ定食だ。 「な、仲良くないよ。ただの小学校の同級生だし」 と否定しつつも、そんな野上少年が初恋の人だという事は決して言うまい。 だって、あの頃の野上はとにかく可愛かった。 ぽっちゃりしていて小さくて色白で優しくて。 何よりも笑うと左頬にえくぼができるところなんて本当可愛くて大好きだった。 そう、すべては過去形。 今となって野上は・・・ 「でも、ああやって野上君が接する女子って千奈だけだもん。  我が社の営業ナンバーワン!抱かれたい男ナンバーワン!」 あの頃の面影は微塵もなくなっていた。 ぽっちゃりと小さかった色白君が、日に焼けたがっしりとした180センチオーバーの筋肉質に。 それに加え、仕事の鬼というか笑顔一つ見せないクールな男に変貌していたのだ。 きっとあの可愛らしいえくぼも失われてしまったことだろう・・・。 私立の中・高・大に行った彼とは小学校卒業以後会う事もなく、その間彼がどんな人生を過ごしたかは分からない。 ただ男の子の成長とはこうも変えてしまうものなのだろうか。もはや別人としか言いようがない。 そして先月私の働く支社へと転勤でやってきた野上と14年ぶりに再会した。 私の知っているぽっちゃりとした野上少年は、立派な青年と変貌していた。 だから全然気付かなかった。 『千奈ちゃん、元気そうだね・・・・』 そうハニカミながら、低い声で話しかけられた時も私は気付かなかった。 『え・・・誰・・・?』 実際に名前を聞いても、私の初恋の人とは違う、単なる同姓同名の別人だと思ったほどだ。 あの時、唖然とする私に向けた野上の歪んだ顔と冷たい瞳を決して忘れることはないだろう。 「営業実績の方はわかるけどさ、その抱かれたいって、ドコで統計取ってるの?  私は断然川谷課長派だけどなぁ」 私はふんわりとした優しい人が好きだから。 初恋なんてハカナイものだと思い知った。  
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