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狭い資料室に入れば当然課長との距離も近付き、密室ということも相まって私の胸はドキドキが止まらない。
「さすが野上君だなぁ。こんな短期間でこれだけの資料を頭に叩きこんでるなんて、よっぽど努力してるってことだよね」
川谷課長は感心しながらその資料を一つずつ元に戻して行く。
私は戻す作業を課長にお願いし、新しく頼まれた資料を集めることにした。
「でも野上君、前の支社で会った時はもうちょっと柔らかい感じの人だったような気もするけどね。
特に垣原さんに風当たりが強いように見受けられるけど・・・大丈夫?」
上司として心配してもらっているのは百も承知だけど、課長が私のことを気にかけてくれているんだと思うと嬉しくて、それだけで確実に今地上から数センチは浮かび上がっていることだろう。
「あ、いえ。私たち小学校の同級生なんです。
だから野上君も・・・気心がしてれるだけだと思います」
風当たりは強いが、パワハラとまでは行かない。
課長に心配かけるほどでもない。
「同級生?へぇ、そっかぁ」
「とはいっても小学校の6年間だけで・・・中学以降はずっと会ったこともなかったんですけどね」
って、せっかく課長と二人きりなのに野上なんかの話をせねばならないのだ。
でも、こうやって課長と貴重な時間を過ごせるのは、野上のおかげか。
「俺の方は終わったけど、垣原さんは?」
最後のファイルを棚に戻した課長が私の方を向いた。
「あ、後少しです!」
いつ見てもイケメンで素敵な課長に2秒だけ見惚れ、また自分の作業に取り掛かった。
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