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えっと、この資料は・・・。
課長を待たせていると思うと気が急く。
でももう少しこの二人きりの空間を楽しみたいなぁなんて思う自分もいる。
うわ、あの資料、あんな高い所に・・・。
脚立を探すも見当たらず、精一杯つま先立ちして手を伸ばした。
「うーん・・・後少し・・・・無理かぁ」
あと5センチ背が高ければ・・・もしくは手が長ければ。
そう思っていると、不意に真後ろで人の気配を感じた。
「この資料?もう!俺がいるんだから少しは頼ってよ」
課長の声がしたと思ったら私の背中に課長の胸が当たった。
か、か、課長が私の真後ろに・・・!!!
余りの距離の近さに・・・・。
ひょ、ひょえ~~~!!!
慌てて飛び跳ねたその拍子につま先立ちの足がグリッとなり身体のバランスを崩す。
「うわ、垣原さん・・・っと!」
そんな私の身体を、とっさに課長が支えてくれた。
密着する二人の身体。その距離0センチ。
「か、課長・・・・」
「ビックリした・・・」
ビックリしたのはこっちもです!と言いたいが、現在の状況に言葉が出ない。
きゃー!!
私今、課長に後ろから抱きかかえられている状態です・・・!
「ご、ごめん!」
状況に気付いた課長が先に私を離した。
そして今度は慌てた課長が手元のファイルを床に落としてしまった。
「わわわ、ごめん!本当、俺、何やってんだか・・・・」
「い、いえ。私の方こそすみません!」
今度は二人して床に散らばった資料を拾い集める作業に入った。
ドキドキドキ・・・・。
まさかの展開に胸の鼓動が止まらない。きっと顔が真っ赤だ。
緊張と動揺で覚束ない手で紙を拾う。
うわ、ちょっと手が震えてる、私。
最後の一枚を拾おうとした瞬間、今度は私の手に課長の手が重なった。
ベ、ベタ過ぎる・・・・。
わざとらしい程のベタな展開に思わず課長と顔を見合わせる。
ハッとしたような顔の課長と至近距離で目が合った。
重なった手はそのままで。
困惑したようなでも照れたような表情の課長。
きっと私も同じような顔をしている。
ドキン、ドキン、ドキン・・・。
私の心音が課長にも聞こえそう。
「あの・・・課長・・・私・・・」
「───何してんの?」
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