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人材の目途がたち、ひと段落した仕事に満足げな視線を腕時計にやる頃。
「よう!」という威勢の良い声とともに、ダンディな男がのしのしと部屋に入ってきた。
口髭を整えた精悍な顔つき。
一番隊を率いるゲオルグ大佐である。
「ようこそ、久しぶりだな」
2人は肩を叩きあうと固い握手を交わした。
親しい友人同士である彼らは、忙しい日常の合間にお互いの部屋にやってきては、将棋や煙草を楽しむ仲なのだ。
「なあ、今この部屋から女の子が出てきたぞ?」
先ほどまでアキラが座っていた肘掛け椅子に腰掛けながら、ゲオルグは意味ありげに口角を上げた。
「アキラ君のことか。次の火星の任務に同行させるのさ」
「ほおう、わざわざ部屋まで来させるとはそういう仲なのか?」
ゲオルグは面白そうに鼻の下を伸ばしている。
「だといいけどな、あれは学生だぜ。彼氏も一緒だっただろう?」
「はっはっは! 俺には女の子しか目に入らない。それに、お前にしてみりゃ彼氏なんぞいたって関係ないだろ?」
これに対してソウゲツ大佐は「どうかな」と肩をすくめた。
過去に身に覚えはあるものの、ほとんどが女の方から持ち込まれた目も当てられない厄介な記憶ばかりなのだ。
やがてタキヤが温かいコーヒーを持って入ってきた。
深みのあるオリジナルブレンドの香りがあたりに漂う。
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