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女の子はドレスの両端をつまんで可愛らしくお辞儀をすると、一段ずつステップを降りてきた。
――美しい。
その娘が一歩足を踏み出すたび、あたりの空気が一瞬にして鮮やかな色に染まるようだった。
アキラとジェイドは思わず目を見張る。
間違いない。
あれが火星のお姫様だ。
ロレンス警視総監は女の子に深くお辞儀をすると、アースSPの宇宙船まで彼女をエスコートしていく。
お姫様が、カーペットを歩く。
角を曲がる。
アキラとジェイトの前を通り過ぎる。
その瞳は火星の民の中でも最も美しいとされる鮮やかな緋色。
長く深い色の睫毛が大きな瞳を彩っていた。
薄桃色のツンとした唇は可愛らしく、瑞々しい果物を思わせる。
うなじを隠す長さの亜麻色の髪は、天使のもののように輝き、それに呼応して白い肌も淡く光を放つようだった。
「お姫様」という存在を生れて初めて見るアキラとジェイドは、その圧倒的な美しさに、しばらく何も考えることができなかった……。
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