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――その頃。
応接室にリーネ姫を招いたソウゲツ大佐は、太陽系の浮遊模型を見せながら今後の運航プランについて説明していた。
「地球を出発してから約1日が経ちました。現在、この辺り……ちょうど火星の軌道線が見えてきた所です。このまま予定どおりに運航しますと、目的のプルートウには20日後に到着します」
「そうなんだ。挙式なんてまだまだ先なんだし、あんまり急がなくていいよ」
「何かトラブルを抱えた際は、安全第一でプランを変更します。もちろん挙式には支障のないように致します」
「うん。そうして」
お姫様は緋色の眼差しを、天体浮遊模型に馳せていた。
「ご質問が無ければ以上です」
大佐がそう言うと、お姫様は人なつっこい視線を彼に向けた。
「僕ね、土星の輪っかをこの目で見てみたいんだぁ。小さい頃に母上が読んでくれたお話にでてきた。ソウゲツは知ってる? 土星の輪っかをいっしょに見た恋人の話」
「残念だが、予定の航路から肉眼で確認することはできません」
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