第1章

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 そんな智恵も、いつしか大人になり子供も産まれ、たまに実家ではなく都村のおばちゃんの顔を見るべく田舎へ足を運んだ。その時にも都村のおばちゃんは懐かしく幸せそうに微笑んで、あの『私の将来の夢』の作文について語るのだった。勿論、都村のおばちゃんは本気でハワイ旅行に連れて行ってもらう気などは更々無さ気だったのだが。  そして、ここ何年か、顔も見せてない都村のおばちゃんに昨日たまたま気になって電話した。 「モシモシ?智恵じゃけど、おばちゃん元気?」 「智ちゃんかね?智ちゃん元気かね?…はぁ智ちゃん所の上の子供らぁも大きゅうなったじゃろうねぇ…」 「うん…一番上は18になったし二番目の子も、もう働きよるよぉ」 …ひさびさに聞いた都村のおばちゃんの声、元気そうで安心したが腰が悪いみたいで、少し前、車椅子生活をしていたらしかった。 今一度、Eエブからのメールを見て思い返した。  御歳85才の都村のおばちゃん。ハワイ旅行は夢で終わってしまったけど、近場の温泉くらいは連れて行ってあげたい。
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