コンビニエンスストア

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色とりどりのお菓子が陳列された棚の向こう側。地味な紺色のネクタイの結び目が見えた。 誰かと電話している声で、すぐに気がついた。けんちゃんだって。 気づいて欲しいけど、気づいて欲しがってることには気づかれたくない。話したいけど声はかけたくない。 「……ようこ? 柿沼ようこ? なあ、わかる? 俺の事」 棚の裏にまわると、けんちゃんは電話を切って驚いたように私に笑いかけた。何年も経つのに、柔らかそうな黒髪を無理に上げている前髪は変わらない。七五三とは違う、身体に馴染んでいるスーツ。 (眼鏡してる。目、よかったのに) 「すごい久しぶりだね~。高校ぶり? けんちゃんがスーツとか、なんか。オジサン」
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