コンビニエンスストア

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けんちゃんが嫌そうに眉を下げて笑う。そんな気取った笑い方は昔と同じ。 「オジサンだよ、30だもん。いいよな、ようこまだ20代だろ。2歳違いでえらい差だ。こんなとこで何してんの? 県外引越したんじゃなかったっけ? 結婚して」 だから地元は嫌だ。赤の他人の情報までどんどん耳から入って腹にたまっていく。パンパンになって身動き取れなくなるのが嫌で、私は外に出た。 「今だけこっちに住んでるの」 『なんで?』とかいう話にはならなかった。2人とも大人だから。 「これ、知ってる? ザリガニパン。こないだテレビでやってから、今コンビニで1番売れてるらしいよ」 パンのコーナーで、けんちゃんがしゃがんだ。私も隣にしゃがむ。 「こんなのが売れてるの? 私テレビ見ないからわかんない」 「“わたし”」 けんちゃんがザリガニパンを3つ取って、小馬鹿にするように笑った。 「ようこ、もう自分の事“うち”って言わないんだ」 「言わないし。3つも買うの? そんなに美味しいの?」 ホットドリンクのコーナーに移動したけんちゃんについていく。
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