コンビニエンスストア

「昔さあ、俺が３０歳になっても独身だったらようこと結婚するって言ったな」

「だっけ？」

覚えてる。でも１６歳の私は自分が２８歳になることが、どこか信じられなかった。いつも１日が１ヵ月くらいに感じてて、何かに追われるようにヒリヒリ焦っていた。

早くこの不自由な街から出たかった。そのために結婚して家出同然に家を出た。

「ここさあ、子育てにはちょうどいいとこだよね。何もなくて」

駅前にはこのコンビニが一件だけ。カラオケもゲーセンもない。

「山が遊び場だからな。覚えてるか？ 落とし穴事件」

「事件だよ。警察来たもんね」

小さい時。けんちゃんと落とし穴に落ちて出られなくなって、一晩明かしたことがある。捜索願いが出されて警察沙汰になって、無事に保護されてから私はお父さんにぶん殴られた。